ロシア文学に学び、小説『浮雲』を著したことで有名な二葉亭四迷。
その独特なペンネームも度々話題に上がりますね。
ペンネームの由来は「くたばってしまえ」?
まず真っ先に気になるのはその特別目を引く名前。
もちろんこれはペンネームで、本名ではありません。
二葉亭四迷の本名は「長谷川辰之助(はせがわたつのすけ)」です。
この名前の由来は坪内逍遥の名を借りて小説『浮雲』を出版したことに対する自信への罰と言われています。
たまに、「文学の道に進んだことに対して理解を示してくれなかった父への文句」という説明を見ますが、どうやら間違いのようですね。
(こんなデマを流されるなんて、お父さんもいい迷惑ですね。)
二葉亭四迷とはどんな作家なのか
最大の疑問が解決されたところで、いよいよ核心に進んでいきます。
二葉亭四迷という作家を簡単に説明するなら、
- 写実主義者で、坪内逍遥と親交が深い
- 小説としては初めての「口語文」を用いた
- ロシア文学の研究者でもあった
といったところでしょうか。
写実主義者としての二葉亭四迷と坪内逍遥
写実主義とは明治時代に、坪内逍遥と二葉亭四迷によって作られた文学の思想で、「ありのままの様子を文学にしよう」という考え方です。
それまでは勧善懲悪だとか、芸術的な表現(レトリック)に拘った作品が多かったのですが、明治の文明開化のころからそれらに固執しない作風が多く出回るようになりました。
代表作は『浮雲』
『浮雲』は二葉亭四迷の代表作として最も有名なものだと思います。
文章は確かに口語文で書かれており、同時期の他の作家と比較すれば多少読みやすいかもしれませんが、実際に本を開いてみるとなかなかの難易度です。
読もうと思えば読めないことはありませんが、予備知識があったほうが楽でしょう。
内容などをさっくりと紹介していきますのでご覧ください。
『浮雲』:あらすじ
明治の文明開化の頃のお話です。
お役所勤めの主人公・内海文三が免職になり、ライバルの本田昇が出世していきます。
そんなつらい状況のなか、追い打ちをかけるように、文三と恋愛関係にあった恋人・お勢をライバルの本田に奪われます。
この『浮雲』は職と恋人の両方を失った文三の内面的な苦しみを書いた小説なんです。
『浮雲』はロシア文学をモデルにして作られた
実はこの物語にはモデルが存在します。
イワン・ゴンチャロフの『オブローモフ』です。
二葉亭四迷はロシア文学に造詣が深く、同時代の作家の作品をモデルにしたのでしょう。
言文一致体とは何か?何がすごいのか?
上で解説した『浮雲』の最大の特徴は、口語文(=言文一致)で書かれていることです。
この記事でも何度か使われている単語ですよね。
口語文、言文一致体というのは、「~だ」で終わるような文章のことを指します。現代の小説はほぼすべてこの文体で書かれており、僕たちにとっては口語体なんて当たり前のことですが、当時はとても珍しいものでした。
二葉亭四迷は言語の能力が高かったとみられ、ツルゲーネフなどロシア語の翻訳においても堪能な表現で高い評価を得ています。
まとめ
一度聞いたら忘れない、キャッチーな名前が特徴の二葉亭四迷。
彼は実はロシア小説に通暁しており、また口語文の先駆者としても高名な人物でした。
代表作『浮雲』は、有名な割に実際にはそれほど読まれていない作品ですので、ぜひ読んでみることをおすすめします。(実は、新潮文庫からも出版されています。)
最後に、同時期に活躍し、交流のあった作家「坪内逍遥」について紹介した記事のリンクを張っておきますね!